2021-07-19

第11回 KOZUKA ART FESTIVAL2021(鴨川市金束)

会期:2021.07.24(土)~2021.08.01(日)

本年で11回目を数えるアートフェスティバル。2021年のゲストアーティストは鴨川市在住の鶴田静さん(作家)です。長狭街道一帯は、房総でも高度成長時代に奇跡的に開発の手が入らなかったエリア。古来からの棚田などの長閑な文化が残っていました。1970年代から、アーティストが暮らし始めた場所です。サスティナブルな社会、注目のパーマカルチャーの原点がこの地に生きています。

以下、主催者アーティスト宮下昌也さんのご挨拶です。

コヅカ・アートフェスティバルには、2つのコンセプトがあります。ひとつは、会場となるアートガーデン・コヅカのテーマでもある「人と自然をアートでつなぐ」。

もうひとつは、「自然・地域・ライフスタイルをオルタナティブ(もうひとつの)な視点で見つめる」です。このオルタナティブな視点から見つめるというところが理解できると、南房総に多くのアーティストが移住し、活躍している訳が理解できます。

ひと昔前は、都会の業界に売り込んで行くことが、アーティストとして成功への道とされていましたが、今は、それで本当に豊かになれるのか?と多くの人が疑問に思っています。それよりは、より良い環境の中で、家族や友人達と暮らしながら、自給的な発想で自己実現していくほうが幸せへの近道なのではないか?と彼らは気づき始めているのです。

このアートフェスには地元以外にも、関東一円から30名を超えるアーティストやミュージシャンが参加しています。

すべてのアーティストには参加条件として会場に足を運んでもらい、なぜこのような過疎農村地区の荒れた里山を会場にアートフェスをやるのか、ガイダンスを行ってその趣旨を理解してもらっています。

みんな柔軟な感性でこの中山間地の歴史や、コンセプトの意味を理解し、独自の表現を展開しています。すばらしいアーティスト達が集まってくれました。 屋外ステージ作りなどの会場整備も、参加アーティストやボランティアによって進められています。切り出した間伐材など山にある素材を使い、できるだけ持ち出さず、持ち込まず、自分たちの手で。山そのものが展覧会場なので、里山整備も兼ねています。荒れて鬱そうとしていた山がどんどん明るい健康な姿に生まれ変わっています。経済優先の考え方のため見捨てられた里山を、アーティスト達がよみがえらせている。まさに「人と自然をアートでつなぐ」が具現化されていっています。

そしてもうひとつ、このアートフェスの重要なファクターとしてオープンアトリエがあります。長狭地区の8つのアトリエが会期中来場者の受け入れをします。

南房総のアーティストの作品は、ライフスタイルに深く根ざしています。作品を生活と切り離して美術館に飾るより、その作家の生活空間で味わうことで、その魅力がもっとも如実に伝わると思います。 日本はもともと、世界が目を見張るほど庶民の生活の中にアートが生きている国だった訳ですから、自分たちの生活にアートを取り戻すきっかけに、このオープンアトリエがなればと思っています。

こういった発想は、けして新しいものではなく、120年前にイギリスで起きた「アーツ&クラフツ運動」で、日本では「民芸運動」の中で、生活と芸術のあり方が追言されています。ただ、高度成長の荒波が、その発想をあたかもメルヘンのように形骸化してしまいました。高度成長が終わった今こそ、先人の理念が地方発信のアートとして具現化していくかもしれません。

古きものとの融合ということでは、このアートフェスの会期を地元の例大祭とリンクするよう設定しました。お祭りは僕らの生活に残っている、もっとも生きた伝統的アートですから。

このフェスも一過性のものでなく、続いていくものにしたいと思っています。南房総にはたくさんのアーティストが暮らしているのですから、各々をゆるやかにつなげることによって、内外に向けてアートの有用性を伝える機会にしていきたいのです。

クラフトマンの作る質の高い日用品で生活の中にうるおいを加え、野外展示で里山にもう一度人と自然がふれあえる場所を作っていく。ワークショップで子供たちに物作りの楽しさを伝え、ライブで心に豊かさを与える。海の幸、山の幸のオイシイ環境にある南房総にアートが根付けば、本当に豊かな21世紀型のライフスタイルが創っていけると思っています。

最後に、フライヤーのメインビジュアルになっているイラストについて。 このイラストは、「アートガーデンコヅカの未来予想図」として2009年に描きました。どのくらい未来かというと、50年後を想定しています。戦後50年かけて荒れていった里山が、人と自然とのバランスのとれた生態系に戻るには同じ年月がかかると思います。 アートな心=遊び心を持って、そのくらいゆっくりやっていこうというメッセージです。

(宮下昌也 美術家~画家・クラフト作家・絵本作家 2010年)

 

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