2020-09-19

Withコロナ時代の新しい価値観 開疎化、そしてワーケーションライフ

Column 南房総ラレンタンド1 音楽・アート・自然・・・暮らしを、次第に緩やかに

文:株式会社ル・ファーレリゾート代表 山口惠子 

Vacation House & Studio ル・ファーレ白浜 オーナー。音楽のあるリゾート作りを目指し、貸別荘経営の他、出張演奏、音楽制作、イベント企画なども。プロデュースした、ル・ファーレ復興ソングプロジェクト「虹を見たかい~Have you seen the rainbow?」好評発売中。 http://le-phare.jp/

新しい時代の働き方、ワーケーション
「週末田舎暮らし」なんて言葉が完全に過去のものと思えるほど、今「ワーケーション」が脚光を浴び始めている。田舎は、平日に仕事をしながら滞在する場所へとだんだんシフトしつつある。ワーケーションとは、「work(ワーク)+vacation(バケーション)」を組み合わせた造語で、リゾート地などで休暇を兼ねてリモートワークを行うこと。普段の職場を離れて、旅するようにリゾートを楽しみながら、オンラインで仕事をする。ル・ファーレで、働きながら平日ステイする「ワーケーションプラン」を売り出すと、実に予約の半数以上がこのワーケーションプランに集中した。これまで「ノマド族」など、限られた一部のIT系の人の働き方だったのが、新型コロナウィルス感染防止対策としてリモートワークが推奨されたことにより、一気に広がりを見せたのである。
海風が心地よいバケーションハウスでのリモートワークは、実際多くの職業人に愛された。IT系企業の経営者が大きなプロジェクターでリモート会議を行なっているかと思えば、スタジオからzoomで学生に向けて講義をしている大学教授もいた。感染爆発したミラノから避難してきたイタリア家具作家などの造形クリエイター陣。もちろんスタジオがあるから、レコーディングや作曲をしているミュージシャンもいる。小さなお子さんとの自粛生活に煮詰まって気分転換をしに来られた方もいた。朝はビーチコーミングをしたり、夜は露天風呂から満天の星を見たり、デッキでBBQを楽しんだりと、それぞれがオンラインで仕事をしながら、自然の中でリラックスするという生活を送っていたようだった。

2拠点生活と「開疎化」の未来
私はここ4年ほど、南房総と県北の2拠点生活をし、平日は県北から南房総の会社を遠隔経営している。独身時代も2拠点生活をしていたけれど、今は情報化が進み、昔ほどやりづらくはない。遠隔からの経営も、コミュニケーションはチャットツールで、会議はzoomで何の問題もない。zoom会議して、議事録をFacebookにあげ、ハンコの代わりにいいねで承認をもらって実行にうつす。Webカレンダーで予約を管理し、急ぎの用事はメッセンジャーで一斉連絡。田舎にいても都会にいても海外にいても、仕事が全く変わらなくなってきたなぁ、とここ2、3年しみじみ実感していた。
全てリモートワークでも可能だと思っていたところに、Withコロナ時代がやってきた。この期間、多くの方が「今まで繰り返してきた仕事の仕方は何だったのだろうか?」と自問自答したのではないだろうか。満員電車に乗らなくても仕事は立派に成立するし、感染症の時代のニューノーマルには混雑の緩和が欠かせない。YahooのCEO、安宅和人氏は、これから世の中は「開放×疎」、すなわち「開疎化」へ向かう、と提言した。このような背景を経て、今では政府までもが、サテライトオフィス普及などを呼びかけ、リモートワークでの「ワーケーション」を推進するに至ったのである。

ニュートンの創造的休暇と価値観の再定義
新型コロナの影響で県北の息子の学校が休校となり、私達は3月からの3ヶ月間を南房総の海辺の家に帰って過ごした。その生活が始まるとすぐに、あぁ、これはもうすぐ親元を離れていく息子と過ごす時間を、天が思いがけなくプレゼントしてくれたのかも、と思うようになった。私達は歌ったり、料理したり、月や星を見たり、散歩したりしながら過ごした。会えない友人達とテレワークで音楽や映像を作り、エンジニアの友人と野や山に入りフィールドレコーディングを行ったりもした。コロナ禍とはいえ、それは学校生活を普通に送っていたら過ごせない素晴らしい時間だった。完全に勉強のことを忘れるわけではないにしても、学校からオンラインで出される課題をこなしながら、本物の自然の中で何かを創造できる生活体験は、とても貴重なものだった。
これからICT教育が進み、オンラインで授業を受けられれば、みんながこのような学び方をする時代がきっとやってくるだろう。自然の中にいながら教科はオンラインで、そんな学び方が、中高、大学とこれを機会に広がっていくのではないだろうか。実際に海や畑や動物や昆虫と触れ合う時間は、これまで塾の長机で学んできた子達の頭脳に、創造的な思考空間を与えるだろう。ニュートンだってケンブリッジ大学が休校期間中に、故郷ウールスソープのリンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を発見したのだから。
これからの時代、ウィズコロナに即しているかどうかで、あらゆる産業の価値が再定義されるようになると思う。価値が上がるのは「開放、疎、非接触」の方向へ動いている企業や事業。逆に密で閉じた空間で長く仕事をさせる企業は「コロナブラック」などと不名誉な認定をされることになるかもしれない。社会を安全に保つためにリモートワークが欠かせない時代、仕事のあり方のベストな形態の一つがワーケーションであろう。海や花、太陽に星空… 本物の美しい自然のある南房総で、まずは気軽なワーケーションライフ、始めてみませんか?

ARTISTIC BAY BREEZE vol.1 20200901発行号に掲載

 

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