2020-08-29

17:20のLYRICS

ワーズワースが言ったように、詩が静寂の中で呼び覚まされる情感なら、金谷港17時20分発の東京湾フェリーは、まさに地球が語る荘厳な叙情詩なのだろうと思う。ゆったりと滑るように久里浜港に向かうその叙情は、刻々と心のうつろいを空に投影する。紺碧の空が次第に赤く染まり、心の奥底のひだの部分をも赤く照らす。緩やかに流れる40分の叙情に言葉はない。赤く染まる空は、刹那的な心をあらわにして高揚し、やがて来る紫紺に染まる夕闇は心に静寂と沈静をもたらす。風と光の叙情が360°の永遠に包まれる。金谷港17時20分発の東京湾フェリーは荘厳な叙情詩だ。孤独なコロナ時代の旅情がここに。

 

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です